116E15 呼吸音は難しい

116E15
疾患と聴診所見の組合せで正しいのはどれか。

COPD --------- stridor
b 胸膜炎 --------- rhonchi
石綿肺 --------- fine crackles
d 肺水腫 --------- Hamman's crunch
気管支喘息 --------- friction rub
解答: c

 

COPDはrhonchiで中枢気道の狭窄を示唆する

呼気と吸気で聴取するがより呼気で大きい

 

□stridorは上気道の狭窄を示唆し、喉頭蓋炎などで聴取する

吸気と呼気で聴取するが、より吸気で大きい

 

□wheezeは喘息、COPD心不全

心不全で水が気道にたまりwheezeになる)

末梢気道の狭窄を示唆する

これは呼気で聴取とされるが、実際には・・・

呼気時のみ起こる場合は,吸気および呼気両相で起こる場合よりも軽度の気道閉塞を示し,両相でみられる場合はより重度の気道の狭小化を示唆する

 

従って、一応教科書的に書かれるように

stridor(吸気)>rhonchi(呼気)>wheeze(呼気)

という流れになる

 

【定義】

上気道とは鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭喉頭まで

そして喉頭よりも肺側の気管を下気道とする

なかでも、2㎜を区切りにして下気道を中枢気道と末梢気道に分ける

(なお1〜2mmの気管支が細気管支である)

 

ゆえに、呼吸音からはrhonchiを聴取するCOPDの病変は2㎜以上の中枢気道に存在することが分かる

 

しかし区別する耳の能力はたいして重要ではない(笑)

これを後述する

 

【過去問】

112A66

70歳の男性。労作時の呼吸困難を主訴に来院した。3年前から労作時の息切れを自覚し、徐々に増悪するため受診した。夜間睡眠中には自覚症状はない。43歳時に心房中隔欠損症の手術歴がある。気管支喘息の既往はない。喫煙は20本/日を47年間。3年前から禁煙している。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧134/70mmHg。呼吸数20/分。SpO2 97 %(room air)。6分間歩行試験ではSpO2の最低値は91%であった。胸部聴診では呼吸音は減弱し、軽度のrhonchiを聴取する。心エコー検査では、左室駆出率は保たれ推定肺動脈圧の上昇も認めない。呼吸機能所見:VC 3.40L、%VC 92%、FEV1 1.30L、FEV1% 38%

過去問にしっかしロンカイと記載がある

 

【余談】

まだまだCOPDはわかっていないというのが実情だろうと思う

ちょっと古い記事だが・・・

2001年に発表されたGOLDによる世界的規模でのCOPDガイドラインは、気流制限の主要責任局在は内径2mm以下の末梢気道であるとした。このことは、ここに始まった炎症が肺の末梢に拡大し肺気腫を生じ、気道中枢側に優位的に進展すれば慢性気管支炎が前景に出るという仮説を示したものである

肺気腫や慢性気管支炎という診断名を用いるとCOPDの臨床病変の完成終末像を印象づけるのみで、最も主要な共通病変である末梢気道病変の欠落が危惧される

したがって科学的妥当性の見地からCOPDにこだわることになる

http://www.me-times.co.jp/book/pdf/HotW11.pdf

 

ここで弊大学の前教授が登場なさったのでしっかりと呼んでみる(笑)

COPDの診断および病態の把握は、病歴・身体所見・肺機能検査・胸部X線・血液ガスなどを総合してなされるべきものです。 

最近発表された国際的なCOPDの診断・治療のガイドライン:GOLDでは、COPDの診断が肺機能検査の中でも最も簡便なスパイロメトリーで行うことができるように配慮されています

配慮でしかないのだ!全くもって完全ではないということでもある!

胸部CTにおいては、低吸収領域の存在により早期の肺気腫病変を検出でき、また気道病変の存在も気道壁の肥厚などで検出できます。このため、COPDの病態をよりよく評価するために、胸部CTを撮像することが勧められます。

 

この2つのタイプのどちらに進むかは、人によりけりながら、診断は一秒率=すなわち気道の方、を重用視しているということになるか。

そりゃCTも撮れよ!って言いたくなりますわな