ALSについて

筋萎縮性側索硬化症 amyotrophic lateral sclerosis

 

まず側索とは、錐体路の通り道のこと。

まぎらわしいものに側角というものがある。

これは灰白質の自律神経が通る部分であり、全く関係ない。

101A44で出題されているくらい、医学生はよく間違っている。

101A44

65歳の男性。

筋力低下を主訴に来院。

1年前から上肢の筋がやせて筋力が低下してきた。

5か月前から歩行に際して疲労が目立つようになり、階段を上るのが困難となった。

2か月前から言語が不明瞭になった。

意識は清明。身長170cm、体重53kg。呼吸数26/分、整。

舌の萎縮を認める。

四肢に筋萎縮と中等度の筋力低下とを認める。

上下肢ともに深部腱反射は亢進し、Babinski徴候は両側で陽性

感覚は正常。排尿障害はない。

上位運動ニューロン障害下位運動ニューロン障害が混在している。

この点は面白い。

側索は錐体路であるから、ここの障害であれば上位運動ニューロン障害にしかならないはずだ。

実際にはネーミングに反して、前角も障害されている。

つまり、筋萎縮性とは、前角の障害であるということだ。

いうなれば、前角側索硬化症とでもいうべき病態だ。

 

下位運動ニューロン障害は上肢により強く起きているが、これは特徴である。

上位運動ニューロン障害は下肢に起きることが多い。

 

舌萎縮はどう説明できるのか?

9,10,12脳神経の下位運動ニューロン障害を球麻痺という。

脳の皮質から出た神経線維は、延髄の神経核で乗り換えて下位運動ニューロンとなる。

ALSではこの神経核がやられているというわけ。

 

しかしALSの運動ニューロン障害は下位だけではなかったように、ここでも上位が障害されうる。

9,10,12脳神経の上位運動ニューロン障害を偽性球麻痺という。

偽性球麻痺では攣縮により強制泣き笑いになるというのがALSの教科書的な説明だが、顔面の運動は7脳神経の顔面神経支配であるから、9,10,12は全く関係ないはずだ。顔面神経核は橋のレベルにある。延髄どころでは収まらずさらに上に行くのか。

ここらへんは正直ツッコんではいけない領域に入っているかな?

 

 

110I3
筋萎縮性側索硬化症患者で第6頸髄の頸椎症性脊髄症を合併するとき、筋萎縮性側索硬化症の病態によるのはどれか。

上腕二頭筋萎縮
腕橈骨筋筋力低下
大腿四頭筋反射亢進
下腿三頭筋線維束性収縮
Babinski徴候陽性

頸椎症性脊髄症と頸椎症性神経根症の引っ掛けから始まる。

頸椎症性脊髄症は上位の障害ゆえ、赤字は頸椎症性脊髄症が原因といえる。

加えて、C6レベルでは前根もやられるため、下位運動ニューロン障害も起きる。

C5支配が三頭筋。

上腕二頭筋はC5/6支配。

上腕三頭筋はC6/C7支配。

腕橈骨筋もC6支配。

なので

上腕二頭筋萎縮
腕橈骨筋筋力低下

も、頸椎症性脊髄症が原因と言える。

ちょっと、難易度高すぎかな。。

 

 

113A47
64歳の男性。ろれつの回りにくさと体重減少を主訴に来院した。半年前から話しにくさを自覚しており、同僚からも声が小さくて聞き取りにくいと指摘されるようになった。2か月前から食事に時間がかかるようになり、2か月間で体重が5kg減少している。1か月前からは両手指の脱力で箸が使いづらく、階段昇降も困難になってきたため受診した。意識は清明。眼球運動に制限はなく顔面の感覚には異常を認めないが、咬筋および口輪筋の筋力低下を認め、舌に萎縮と線維束性収縮を認める。四肢は遠位部優位に軽度の筋萎縮および中等度の筋力低下を認め、前胸部、左上腕および両側大腿部に線維束性収縮を認める。腱反射は全般に亢進しており、偽性の足間代を両側性に認めるBabinski徴候は両側陽性。四肢および体幹には感覚障害を認めない。血液生化学所見:総蛋白5.8g/dL、アルブミン3.5g/dL、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、血糖85mg/dL、HbA1c 4.5%(基準4.6~6.2)、CK 182U/L(基準30~140)。動脈血ガス分析(room air):pH 7.38、PaCO2 45Torr、PaO2 78Torr、HCO3- 23mEq/L。呼吸機能検査:%VC 62%。末梢神経伝導検査に異常を認めない。針筋電図では僧帽筋、第1背側骨間筋および大腿四頭筋安静時での線維自発電位と陽性鋭波、筋収縮時には高振幅電位を認める。頸椎エックス線写真および頭部単純MRIに異常を認めない。嚥下造影検査で造影剤の梨状窩への貯留と軽度の気道内流入とを認める。

この時点でまず検討すべきなのはどれか。

a 胃瘻造設
b 気管切開
モルヒネ内服
d エダラボン静注
e リルゾール内服

d エダラボン静注 e リルゾール内服・・・は賢い奴ほど引っかかる選択。

殆ど効かないので国試で注目するような内容ではない。

クローヌス(英:clonus)とは筋肉や腱を不意に伸張したときに生じる規則的かつ律動的に筋収縮を反復する運動、間代(かんたい)と訳す。中枢神経性障害においてしばしば併発する。クローヌスが見られる場合は、上位運動ニューロン障害(錐体路障害)があるとされる。

安静時での線維自発電位は線維束性収縮を反映したものだが、これを撮るのは難しいこともあって、エコーで確認したほうがイイらしい。