98F33 肝性糖尿病
肝性脳症を伴った肝硬変
肝硬変では糖の合成が働かず、空腹時低血糖を来しやすい・・・ハズだが不正解だ。
空腹時血糖は耐糖能障害が生じた場合には低下しにくい
耐糖能障害の程度がひどくなると上昇するようになる
肝硬変による耐糖能低下
肝硬変による耐糖能低下の特徴としては,肝実質細胞減少によりグリコーゲンの合成や糖新生の障害,門脈大循環短絡路の形成などによる肝臓のインスリンクリアランスが低下し,ブドウ糖が肝臓で代謝を受けずに直接末梢へ流れ込むことなどが原因となり食後高血糖をもたらす.一方糖新生の障害やグリコーゲンの枯渇により,空腹時血糖値は,ほぼ正常値を示す傾向にある.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/51/3/51_3_203/_pdf
より引用
この議論の困惑するところは、「肝硬変の患者では割と糖尿病が合併している」ということを前提としている部分だ。
つまり肝硬変の患者は、
大体の人が合併している糖尿病により、空腹時血糖が高いはずであるのに、
糖新生がないので空腹時に血糖を高める能力がないから、
空腹時血糖がそれほど高くない
ということになるわけである。
門脈大循環短絡路の形成などによる肝臓のインスリンクリアランスが低下し,ブドウ糖が肝臓で代謝を受けずに直接末梢へ流れ込むことなどが原因となり食後高血糖をもたらす.
ので、インスリンがどんどん分泌される必要がある。
糖尿病になるわけだ。
しかし、それならばインスリン分泌低下性のDMかというとそうでもない。
肝性糖尿病の病態は,インスリン抵抗性が主体である
肝臓に働く作用が特に弱まり、それがいけないのだろうか?
糖尿病型 空腹時血糖値 126 mg/dL
境界型 空腹時血糖値 110~125
正常型 空腹時血糖値 70~109 mg/dL
これが基準値である。
しかし上のメカニズムがあるから、これで考えるのは不適切だ。
むしろ横軸で考える必要がある。
特に HbA1C は脾腫による溶血で偽低値を示すことから血糖コントロールの指標と
しては当てにならないため,GA(グリコアルブミン)を指標とするとよい.しかし,非代償性肝硬変ではアルブミンの合成能が著しく低下し GA に影響が出ることもあり注意が必要である.
また肝硬変の病態から空腹時血糖のみの測定だけでは糖尿病を見逃がす恐れがあり,食後血糖の測定や糖負荷試験を定期的に行うべきである.
と書いてある通りである。
最後に
基本的に肝性糖尿病の治療はインスリン療法が原則である.
話は戻って、この問題は、よく問題文を読んでも糖尿病とは書いていない。
次の文を読み,33,34の問いに答えよ.
62歳の女性.意識障害のため家族とともに来院した.
現病歴:このところ忙しく便秘気味であった.昨夕から食事中に箸を落としたり,しばらくボーッとするなど,少し様子がおかしいことに家族が気付いた.
既往歴:30歳時分娩の際に大量出血をきたし輸血を受けた.病院に行くのが嫌いなため,その後血液検査を受けたことがない.
現症:意識はやや低下している.身長157cm,体重56kg.体温35.8℃.脈拍80/分,整.血圧146/82mmHg.眼球結膜に軽度の黄染を認める.胸部にくも状血管腫を認める.腹部は平坦,軟で,心窩部に肝を8cm触知する.脾は触知しないが,脾濁音界は拡大している.下肢に浮腫は認めない.
DMがすでにあって、DMにしては空腹時血糖が増えない。
そしてインスリンで治療を始めると今度は、空腹時低血糖に悩まされる。
という問題なのだが、問い方は疑問しかない!
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